お釈迦様のお誕生日を祝う「花まつり」に2500年前の精進料理をお供えする

釈尊降誕会のお供え祝膳

◇釈尊降誕会(花祭り)とは

4月8日はお釈迦様のお誕生日です。われわれ仏教徒にとっておめでたい行事として、華やかに、そしてにぎやかに祝います。

文字通り、お誕生日であることをストレートに表す「降誕会(ごうたんえ)」と呼びますが、いくつかの呼び方があります。それを理解するためにはまずお釈迦様がこの世に生を受けた際のお話を知る必要があります。

今から2500年ほど昔、お釈迦様のお母様、マーヤー夫人はある日6本の牙を持つ白い像がお腹に入る夢を見てご懐妊なさいました。出産のため里帰りする旅路で思いがけず産気づき、美しい花が咲き乱れるルンビニーの園でお釈迦様は生を受けられました。その時、お釈迦様は天と地を指さして「天上天下唯我独尊」(この命はかけがえのない尊いものである)とおっしゃり、ご誕生を祝った龍天が、産湯代わりに甘露の雨を降らせて清浄なる水を注いでくれたという故事があります。

そのため、降誕会では白い像を引いて、ルンビニーの園に似せた花御堂(はなみどう)を設けてお花で飾り、誕生時のお姿を模した像に甘茶をそそいで浴びせます。

こうした故事から、「灌仏会(かんぶつえ)」または「浴仏会(よくぶつえ)」あるいは「花祭り」「花まつり」とも呼びます。旧暦の5月8日近辺に行うお寺もあります。

◇甘茶と花まつり

甘茶はユキノシタ科低木アジサイ系の植物で、葉を蒸して丁寧にもみ、乾燥させたものは古くから薬として用いられ、上品な強い甘みが特徴です。なおウリ科のアマチャヅルという植物はまた別物で、灌仏会に用いる甘茶はアジサイ系の方を指します。

虫除け効果があると信じられ、古来墨に甘茶を混ぜて「千早振る卯月八日は吉日よ 神下げ虫を成敗ぞする」と書いて柱に逆向きに貼るとムカデが出ない、というおまじないが行われていました。転じて、4月8日に墨をすり、花祭りの甘茶を少し混ぜて字を書くと上手になる、という地域もあったようです。

仏教では、燃え上がる煩悩を炎に喩え、それを消す仏の智慧(=教え)を雨に喩えることがあります。その雨は、甘く慈悲深い、ありがたい仏法の雨であることから「甘露の法雨」と呼ばれます。甘茶を誕生仏に浴びせる風習はインドにはなく、日本独自のものです。日本では奈良時代の頃にはお香を細かくすりつぶして水に溶いた香水のようなものをそそいでいたようですが、江戸時代になって甘茶を用いるようになったといわれます。甘茶は日本で偶然採れるようになった変種で、インドや中国では採れなかったことから、日本独自の風習がうまれたようです。

なお甘茶を一度にあまりたくさん飲むと中毒症状が出ることがあるため、特に身体が小さい幼児には注意が必要です。普通に湯飲み2~3杯程度を飲む分には問題ありません。

◇三仏忌を機に自分の命や生き方を見つめ直す

4月8日の降誕会、12月8日の成道会(じょうどうえ・お釈迦様がお悟りを得た日)、2月15日の涅槃会(ねはんえ・この世を去った日)をあわせて三仏忌(さんぶっき)と呼び、偉大なるお釈迦様を偲ぶ法要をつとめます。

仏教をひらいたお釈迦様は、架空の存在ではなく実在した一人の人間です。私たちと同じように悩み、苦しみ、そしてたゆまぬ修行の果てに悟りを開かれた人生の偉大なる大先輩です。

この世に生を受けることがどういう意味をもつのか、他の誰とも異なる「私」自身の命はどのような価値があるのか、降誕会に際してあらためて考えなおしてみる機会にしたいものです。

◇お釈迦様の時代、2500年前のお祝い膳を再現試作

当ブログではお釈迦様の時代に、実際に食べていたであろう献立を想像して、降誕会の精進料理お供え膳を試作してみました。4月8日の降誕会までに、順次紹介していきます。

甘茶

花まつりの甘茶

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