真言宗智山派群馬教区 精進料理研修会講師をつとめました

11月下旬、精進料理教室の講師をつとめました。

主催者は真言宗智山派の僧侶で、参加者もすべて男性僧侶ばかりという少々変わった依頼でした。聞けば、真言宗智山派では僧侶として必要な教養を身につけるため、一人前の僧侶となった後も継続して定期的に講義や研修を受け続けることで僧侶としての素養を充実させていくためのシステムが宗派として定められているのだそうです。

曹洞宗にも同様の規定があり私も年に数回は研修を受けますが、智山派さんの制度は、宗派本部の担当者さまとのやりとりを通じ、非常に洗練された充実した制度だなあと感じました。まあ正直言えば受ける和尚さん方の苦労もその分大きいでしょうが、地位に安住せず修行を続けていく姿勢は僧侶として大切だなあ、とあらためて感じました。

各地区の役職者たちの意見によって研修内容に幅をもたせられるようになっているようで、今回は仏教文化のひとつとして精進料理を学ぶための場として設定されたようです。座学だけで無く、実際に調理をしてみようとなさることは大変有意義です。やはり教科書だけではわからない部分があり、単なる表面的な知識として得た情報だけでは、お檀家さんにお話しする際にも薄っぺらくなってしまい本質が伝わりませんから。「精進料理ってのはね・・」と作ったこともない僧が話しても、聴衆の中にはプロの料理人や食品業界関係者もいるわけですし、プロでなくても毎日料理をしている女性なら、なんかおかしいぞ?とすぐに気づかれてしまうものです。

真言宗僧侶と精進料理教室

会場は県内の某公民館の調理実習室です。諸事情で当初と会場が変わり県内とはいえかなり遠方で下見ができず、電話で確認はしましたがどんな道具があるか少々不安だったので念のため一式持ち込んで参加者を待ち受けます。食材、食器、調理道具一式運び込む労力は大変ですが、始まってしまえばかえってその方がスムーズです。少々早く到着してしまい開門を待ちましたが、遅れるよりも早く着くのは講師の基本です。

真言宗僧侶と精進料理教室

特別な会場がなくても、こうしたふつうの集会所で充分精進料理を作ることができます。ご家庭の台所で作れる料理で無くては意味がありませんから。精進料理は特別なものではなく、普通の人が毎日続けることができる身近なものなのです。

真言宗僧侶と精進料理教室

まずは僧侶らしく、御本尊さまに対し祈る法式を行います。この辺はさすがにキッチリしており爽やかな気持ちで開始できました。

真言宗僧侶と精進料理教室

本日の中心、胡麻豆腐作りを参加者全員交替で取り組みます。

ガスの火力が少し弱く加熱に時間がかかったことを除けばとてもうまく調理が進みました。

真言宗僧侶と精進料理教室

みなさん、「料理をしたことないので心配です・・」と謙遜なさっておられましたが、ふだん深めているのであろうチームワークが発揮され、和やかな中で協力しながら非常にスムーズに料理が進みました。

抑えるべきポイントだけ講師が指導し、あとは参加者自らが積極的に調理していきます。

真言宗僧侶と精進料理教室

多めに調理し、お寺で留守番してくださっているご家族分のおみやげや、集会所の管理人さんにもお裾分けを。自分たちだけ食べれば良いという考えではなく、「皆で味わおう」と願うやさしさが僧侶ならではです。

真言宗僧侶と精進料理教室

無事に立派な精進料理が完成しました。これだけ見栄えよければお檀家さんに胸を張ってお出しすることができますね。

智山派さんの作法で食前のお唱えを行い、感謝して頂戴しました。試食中、料理の手順やコツを説明し直し、続いて精進料理の歴史や教えについての講義を行いました。

(お唱えをリードした青年会長さんが、「群馬県○○寺の何何です、☆☆をお唱えします!」みたいな挨拶をした時皆さんニヤリとしていましたが、察するに修行中か研修中の食事での定番セリフなのでしょう、詳細はわかりませんでしたが何か研修独自の言い回しとして伝わるものがありました)

ここ数年、他宗派からのこうした依頼が増えております。宗派の垣根を越え、各宗派のもつ特徴を積極的に学び自宗の布教に活かしていくという姿勢は現代には欠かせない大切な観点だと思っています。
こうした場で講師をつとめる際には、曹洞宗独自の教えも一部紹介しますが、主として仏教全体で精進料理をどうとらえるか、依頼された宗派ではどのように布教に活かせるかといった視点でお話しをしますので、至らないながらも互いに得るものが大きいと信じています。
宗派問わず、また他県にも出張致しますので是非御下命下さい。

今回お世話になりました智山派群馬教区の皆様に深く感謝申し上げます。合掌

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