お供え膳の基本知識_配置図

七月盆を迎えるにあたり、お盆棚にお供えするお膳の基本知識を学びましょう。

何よりも大事なのは、亡き人に対する供養の気持ちです。その心さえあれば、難しい作法は不要で、たとえばふだん使っている陶器のうつわをお盆に載せてお供えしても良いのです。しかし、亡くなった方は仏さまとなっています。仏さまには、仏さまとしての扱いをせねばなりません。親しい友人だからといって結婚披露宴にジーパンとTシャツで出席するようなもので、やはり相手の立場とシチュエーションに応じて変えなくてはいけない面があるのです。
たとえば、お盆のお迎えの日や送り火の日、または最後の晩となる15日の夜だけは正式なお膳をお供えして仏さまとしての丁寧な供養をし、それ以外は少し略してふだんの陶器のうつわで、というのも良いでしょう。気持ちがこもっていれば、自然と形にも表れるものですから、ぜひ正式なお膳の作法も学んでいただきたいと思います。

市販されている「霊膳セット」には何種類かのサイズがあります。ご自宅の仏壇に合うものを選びましょう。

ただしあまり小さいサイズのものはお椀も小さいので、料理を細かく切ったりする必要がありますのでご注意下さい。また、サイズを変えてもお椀や箸の大きさは変わらずに土台(お膳)のサイズだけが変わるというメーカーもあるのでご注意下さい。その場合、大きなサイズの物を買うと土台が大きいのにお椀が小さくてお膳の上がスカスカになるという・・

色ですが、赤・黒・外が黒で内が赤・茶色・溜塗・螺鈿・紋入り・白木・クリーム色などさまざまなものがあります。白木やクリーム色は神道系や一部の宗派で使うものです。ほとんどの仏教宗派では、色はどれでも良いです。赤はご本尊さま、在家は黒。と指導する住職もおられますが、長くなるので今回は書きませんが私が調べた結果、その区別はあくまでもその住職の私見にすぎず、どの色を使っても良いと思います。まあ世間の目を気にしてお葬式当日にお供えする場合赤を避け黒をつかうこともありますので、何種類も揃えるのは大変だから無難に黒を買いなさいという意味合いならわかりますが、ご本尊さまと在家で色を分ける必要はありません。もちろん葬儀の際に赤いお膳でお供えする葬儀ホールもたくさんありますが何も悪くないですよ。

お供え膳の基本知識

お膳セットをあけるとこんな感じで収納されています。

お供え膳の基本知識

メーカーによっては、お椀の箱の裏側に配置方法の図が書いてあります。もちろんこの通りに並べればそれで良いですし、あまり詳しく読んで混乱するなら買った製品の図の通りで良いと思いますが、これでは一部不充分な面があるので、しっかり学びたい方はこの記事をお読み下さい。

お供え膳の基本知識

まずお膳部分は、4面とも同じ形で、向きがありません。どの側を正面にしても問題ないように作られています。

お供え膳の基本知識

お椀は、9枚です。これを昔からの呼び方で、「九重椀(ここのえわん)」といいます。

左から、「飯椀」「汁椀」「つぼ」「平椀(ひらわん)」「高坏(たかつき)」です。

これはフタも含めた枚数で、上の写真でわかるように、高坏(たかつき)以外はそれぞれ形が違うフタがあります。どれがどのお椀のフタかも要チェックです。

お供え膳の基本知識

フタをするとこんな感じになりますね。つぼと平椀のフタは、厚みが薄く、サイズが違うのでまあ間違えないと思いますが、多くの方が、ご飯と汁のフタを間違えます。

お供え膳の基本知識

ご飯椀のフタが小さく、汁椀のフタの方が大きいのです。これを逆にしている方が多いですね。汁椀は、写真のように、フタが身とほぼ同じ大きさで、現実のお吸い物椀などもこうしてフタが閉めてありますよね。ところが、現実ではご飯にフタをするってのは現代の一般社会ではまずみかけないですよね。なので間違えてしまうのですが、こうしたお膳組では、ごはんを軽くよそるのはお客さんに失礼になるとされ、飯椀のフチよりも上までご飯をよそるのが作法でした。そのため、フタはご飯の上にちょんと乗っかる感じで使うものなのでこういう規格になっているのです。まあお米が貴重で、特別な日には普段倹約している分、たくさんご飯をよそってあげるという時代にできたお作法です。

お供え膳の基本知識_配置方法_一汁二菜(略式)

次に、どう配置するかですが、お椀に付属している解説は、上の写真のような場合がほとんどです。実は、これは「一汁二菜」という略式の作法なのです。

お膳組には、「ご飯」「汁」「漬物」は必ず盛り付ける、という和食のルールというか作法があります。修行道場で食べる正式な作法での食事やお供えにも、お粥の場合は別として、必ずこの三点が欠かせません。そして、5枚のお皿に「ご飯」「汁」「漬物」を盛ると、おかずは2種類だけになってしまいます。おかずを「菜」と表現して「一汁二菜」と呼びますが、正式なお膳組では、おもてなしは「一汁三菜」以上ということになっていまして、修行道場でも、ふだん雲水がいただく食事は「一汁一菜または二菜」で、お客様には「一汁三菜」以上です。

つまり、5種のお椀を使うのは、「普段用」の作法なのです。毎日欠かさずお供えするならば一汁二菜の5種で良いでしょう。ただ、めったに作らないお盆のお膳なのですから、ぜひとも略式ではなく本式の一汁三菜で用意してほしいのです。もちろん、修行道場でのお供え膳も、ふだんは一汁二菜で5枚を使いますが、特別な日には一汁三菜以上の品数にしています。

お供え膳の基本知識

その場合はご飯のフタを裏返して「雀皿」として漬物を盛り、計6枚にします。漬物が大きかったり、沢山盛りたいならご飯のフタより大きい、つぼや平のフタを使っても問題ありません。

お供え膳の基本知識_配置方法_一汁三菜(おもてなし式)

これが正式な6枚使う一汁三菜の配置図です。

まとめますと、「5枚使う一汁二菜式は、日常用の略式作法なので、せっかく心をこめて年に何度かしかないお膳を作るのだから、もてなし用の一汁三菜式にしましょうよ!」というのが私が永らく主張していることです。

もちろん、無理なら略式の5種でもかまいません。繰り返しますが、できる範囲でつとめるのが大切です。

お供え膳の基本知識

そして、「ご飯椀」「雀皿(漬物)」「汁椀」の三種は、定位置が決まっていますが、むこうがわにあるおかずのお椀の配置は、ある程度自由です。基本的な位置のルールはありますがややこしくなるので今回の基本編では説明しません。とにかく「手前の3つは置く場所が決まっている、むこうのおかず2つは置く場所を変えても良い」ということですね。

わかりやすいように、箸のある側を手前にして写真を撮りましたが、実際にお供えする場合は箸の側を仏さま側に向けます。

さて、ではいよいよ明日は料理の内容に入っていきます!

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