閲覧者さまの年賀お供え膳レポートをいただきました

静岡県在住の伊藤さまからお供え膳の実例報告が届きました。

平成29年1月2日にご自宅の仏前にお供えしたお膳の写真と、詳細な解説をいただきました。

お嫁に嫁がれたお姉さんや娘さんたちがお子さん、お孫さんたちとともにご自宅に集まり、ご先祖様方に年賀の御挨拶を行うのだそうです。

新年に身内や親族が集まるのはまあよくあることだと思いますが、あえてご先祖様の仏前に御挨拶を、という主旨を前面に出して行うのはなかなか貴重だと思います。新年はおめでたい時期だからと仏事を避けるような誤解が一部広まっていますが、新たな年を迎える節目だからこそ、亡き方々のみたまに対して御挨拶を行うというのは非常に意義深いことです。お彼岸やお盆だけでなく、新年にあたり神仏やご先祖様に手を合わせる習慣を大切にしてこうとなさる姿勢をぜひ見習いたいと思います。

今回は29名の御親族が集まったそうです。29名が一軒に集まるというのはかなりの大人数です。さぞにぎやかで、充実した良い集まりだったことでしょう。ご先祖様もわが家の隆昌に御満足なさったに違いありません。また実際集まったお子さんやお孫さんたちも楽しかったでしょうね。ふだんこれだけの親族が集まる機会は通常だと冠婚葬祭のようなごく稀な機会しかないでしょうから、こうして日を決めて集まる場を作るのは一族の交流のためにも素晴らしいことだと思います。

しかし良い事ばかりではないはずです。それだけの人数が集まるとなれば、主催者としては多くの課題をクリアーしなければうまくいきません。招待の連絡、交通手段や駐車場、会場の設定、食事やお土産などの用意などなど・・29名を集めるとなればそりゃあもう大変な事だったでしょう。

伊藤さんのお宅では、おもに伊藤さんが下準備、奥様が味付けや仕上げと役割分担し、年末の12月27日から準備を始めたそうです。ご夫婦で仲良く力を合わせて進めること自体がご先祖様への恩返しであり、良い供養となっていると思います。

盛り付けた漆器は明治時代からの伝承で、黒漆が一部薄茶色に退色しているさまが長い歴史を感じさせます。このお膳はご先祖様から受け嗣いだお宝だと思いますね。鑑定団でおいくら、というような世俗の金銭価値ではなく、お金に換算できない、ご先祖様方の気持ちがこもった大切なお宝です。

とろろ汁を主菜としてお供えするのが伊藤家の伝統献立だそうで、苦労して調理なさった本年の献立は以下の通りです。

伊藤家の新年お供え仏膳

飯椀 白飯
汁椀 とろろ汁、薬味 大根おろし、刻み葱、刻み海苔
漬物 大根の麹漬け 茗荷の甘酢漬け
平皿 昆布巻、筍、慈姑、椎茸
膳皿 紅白なます干し柿刻み載せ、ブロッコリー、金柑の砂糖漬け
坪  黒豆
小皿 きんぴらごぼう 自家製糸蒟蒻
皿  栗きんとんとキウイフルーツ

一部の食材は種まきからご自身でなさって育てたものだそうで、糸コンニャクもコンニャク芋から作ったとの手のかけようです。ご自身で栽培してさらにそれを手間をかけて調理する、これはもう最高のお供え膳ですね。

仏前に供えるのは上記の精進料理で、家族にはその他 お刺身、出汁巻き卵、焼き叉焼、かまぼこなどのなまものも用意するそうです。

ご苦労なさって用意したかいあって、主役のとろろ汁はすり鉢一杯作ったものがすっからかんになるほど好評だったとか。もてなす側としては、用意した料理が売り切れるというのは最高に嬉しいことですよね。

伊藤さんご夫妻の笑顔が伝わってくるような素晴らしいご報告でした。親族や世代間の結びつきの希薄化が危惧されている現代だからこそ、ぜひこの良き伝統を継承していただきたいと思います。ありがとうございました。

記事が気に入ったら是非SNSでアクションをお願いします☆