おうちに帰るまでが遠足

おうちに着くまでが遠足です

「おうちに帰るまでが遠足です」

ご存じの通り、楽しい遠足で盛り上がり、最後に解散するときに校長先生、教頭先生、または学年主任の先生など、同行した先生の中で位が高い方が〆の挨拶でいう定番セリフです。特定の世代の方なら小学生時代に一度は聞いたことがあるでしょう。

当時は「またそれか!もう何回も聞いたよ~、わかってるってば」と半分馬鹿にしていましたが、この年になるととても味わい深い名文句だなあ、としみじみ感じます。

何ごとも、山場を過ぎるとなんだかもう終わったような気がしてしまうものです。たとえば私がいつも務めているお葬式。枕経、入棺、通夜、火葬、葬儀、告別式、初七日、納骨、一連の儀式はどれきちんと意味があって行われるもので、すべて等しく重要で、僧侶としてはどれも丁寧につとめます。

しかしそうはいっても遺族にとってはやはり山場のようなポイントがあるものです。地域によって順番などが違いますが、当地ではたくさんの会葬者への応対、喪主の謝辞などがある葬儀・告別式が最も気を使う場面になります。

葬儀・告別式では遺族もとても緊張しているのですが、告別式が終わっていったん一区切りしてすぐ行われる初七日法要では、会葬者も帰って身内だけで行われる上にそれまでの疲れが出るため、緊張の糸が切れて雰囲気がガラッと変わるのを感じます。まあ、少し落ち着いてゆったりするくらいなら良いのですが中には明らかに気が抜けて、無駄話をはじめたり、ダラッとした空気を醸し出すご親族もおられます。

そんなとき、私は「おうちに帰るまでが遠足ですよ」を思い出すのです。

言うまでもありませんが、その主旨は「朝早く出発してから、今こうして帰ってきて解散の挨拶をする今まで、今日はなんの事故もトラブルも起きずに無事終わることができて、本当に良かったですね。でも、もしこの解散式のあと、おうちに帰る途中の道で、事故にあったら、せっかくの遠足の良い想い出が台無しになってしまいます。おうちの人も心配して待っています。寄り道せずに、最後まで気を付けて帰りましょう」ということです。引率する側としては、「無事に」というのが最も重要な点なのです。

せっかく良い葬儀・告別式が終わったのだから、さいごの初七日法要が終わるまで気を抜かず、同じようにまごころをこめて、静粛に、丁寧につとめて欲しいなあ、故人もきっとそう思っているはずなのです。

どうしてこんな話を今日書いたかというと、今年の春のお彼岸は23日までです。しかしあれだけ春分の日前にお彼岸の話題を取り上げていたマスコミも、連休明けにはパッタリと触れなくなりました。テレビに影響されすぎるのが現代人の悪いくせなのか、当ブログへの訪問者数も今日は昨日までと比べて激減です。もちろんお仕事があるでしょうから、僧侶のように一週間ずっとあれこれ仏事に気をかけるわけにはいかないでしょう。しかしせめてお仏壇にお線香をあげるなど、自分でできる範囲でお彼岸期間の一週間、最後の日まできっちり務めていただけることを願っております。

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