精進料理のダシについて 6

 昨日解説した昆布の種類の他に、近年注目を集めている昆布があります。それは、「根昆布」と呼ばれる昆布で、昆布を収穫する際に通常は切り取られない、岩に付いた根に近い部分です。

根昆布でだしをとると、かなり粘度が高い濃厚なだしになるのですが、ドロドロしているため、吸い物や煮物などにはあまり向きません。特別にコクを出したい料理の時には使う場合もありますが、わざわざだしに使うことはあまりない昆布です。


精進料理のダシについて 6

↑「根昆布」

この「根昆布」を、先日ご紹介した「水出し法」でだしをとると、非常に栄養分が高い昆布水がとれます。根に近いことから、ミネラル分が豊富なのです。煮出し法だとミネラルの損失がおこるため、水出し法が適しています。麦茶などの容器に2~3かけらほど入れて冷蔵庫に半日入れておくと、かなり濃いだしが出ます。これをコップで飲むと健康に良いというわけです。

ドロドロ成分の正体は「アルギン酸」で、腸内の有害物質やコレステロールを排出する働きがあるといわれます。また大腸ガンの予防にも効果があります。

また昆布に含まれる各種ミネラル成分が体内でさまざまな働きをします。カリウムは血圧を調整し、ヨウ素は新陳代謝を向上させ、カルシウムは骨の発育・精神安定・安眠効果があり、マグネシウムは老化を防止し、亜鉛は免疫力の強化、鉄と銅は血液を作り抜け毛の予防効果、セレンは抗ガン作用・・・などなど。

最近の研究では、昆布に含まれるラミニンという成分が血圧を下げ、血管を強くし、またフコイダンという成分がガンを抑制するという効果も発見されています。

現代人に不足しがちなミネラル分が多く含まれる昆布、それを毎日手軽に摂取できる「根昆布の水出し」、健康のためにおすすめします。ちなみにこういうものは1ヶ月とか短い期間行ってもあまり効果がなく、長期にわたって生活習慣として続けてこそ効果が出るものです。

精進料理ではだしとして昆布を常用しますが、日頃昆布の栄養を口にしている禅僧に長命な方が多いのも、昆布の栄養分が健康によい証明といえるかもしれません。

同様に、近年注目を集めているのが「がごめ昆布」です。特にメディアで紹介されてから急激に人気が上がった昆布で、産地としては函館周辺で収穫され、真昆布とほぼ同じ地域です。

「がごめ」というのは生の状態の昆布表面に、竹編みのような独特のかごめ模様があるためにそう呼ばれます。根昆布と同じようにミネラルなど豊富な栄養分が特徴ですが、同じようにドロドロのだしがとれつため、伝統的にはあまりだしに使うことはありませんでした。水出し法では昆布の臭みが目立ってしまうので、あえて使うなら煮出してアクを取り除いた方が良いでしょう。

昆布の身自体はまろやかで、煮物などにしてもおいしいのですが、葉の模様がグロテスクに感じる方もいると思いますので、目立たないように細く切るなどの配慮が必要です。


精進料理のダシについて 7

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