精進料理のダシについて 8 うま味成分とは

 新年以降おかゆ特集が続いたため、だいぶ間が空きましたが、年末に進めていた精進料理のダシについて、あと数回ほど解説を加えたいと思います。

 前回までに述べたように、昆布や椎茸からとったダシを使って調理を行うと、単なる水を使った場合に比べて野菜の持ち味が格段に生かされ、おいしく感じます。それはダシに含まれる「うまみ成分」によるものです。

昆布のうま味成分はアミノ酸系のグルタミン酸、アスパラギン酸で、干し椎茸のうま味成分は核酸系のグアニル酸です。ちなみに精進料理では使いませんが、和食で用いられるかつお節には核酸系のイノシン酸とよばれるうま味成分が含まれています。

ある研究では、これらのうま味成分は、それぞれ単独で用いた場合よりも、別の種類のうま味成分を混合した方が格段においしくなるとされます。すなわち、昆布+かつお節、または昆布+干し椎茸のように、系統が違ううま味成分を組み合わせるのです。かつお節+干し椎茸は系統が同じなので相乗効果は薄くなります。化学的な研究などできようもなかった時代から、すでにその効果が経験則から発見されており、日本食では昆布+かつお節を用いてダシがとられていました。

精進料理では、かつお節を使いませんので、昆布+干し椎茸の組み合わせが良いということになります。

注意しなくてはいけないのは、うま味成分だけを考えれば昆布と干し椎茸を併用してダシをとるべきなのですが、干し椎茸を使った場合、うま味成分だけでなく、個性が強い干し椎茸の味が濃くなってしまうのが問題です。したがって、私の場合には吸い物のように純粋な味が要求される献立の場合は昆布だけのダシを使い、うどんのつゆとか野菜の煮物などの場合は混合割合を調整しながら併用する、という方法をとっています。

また、昆布にしろ干し椎茸にしろ、せっかく良いうま味成分を含んでいても、それを上手に抽出させなければ意味がありません。最高級の昆布を使っても、よそ見をしていてボコボコ沸騰させてしまったら昆布が台無しになってしまいます。うま味成分が効果的に出るような方法をとる必要があるのです。

なお余談ですが上記の三食材のうま味成分を化学的に発見したのはほかでもない日本人です。

(昆布→1908年 池田菊苗氏 かつお節→1913年 小玉新太郎氏 干し椎茸→1960年 国中明氏) 日本食にとって、これらのダシ=うま味成分が欠かせないことを表す一要因といえるでしょう。

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