風邪の予防に金柑の甘露煮

今年も寒い冬がやってきました。すでに当地では初雪が降り、朝晩厳しい冷え込みが続いております。朝起きてツルツル頭を水で洗って清めると、白い湯気が立ち上るほど、低い気温の毎日が続いています。

初雪

そんな寒い冬にお奨めしたいのが、「金柑の甘露煮」(きんかんのかんろに)です。
昔は砂糖などの甘いものが貴重だったため、甘露煮はお正月やお祝い事の時にしか口にできないご馳走でした。また、非常に手間がかかるため、手間でもてなす精進料理では冬の定番献立とされています。永平寺の精進料理でも、冬の来客膳によく盛られます。
一度作ってしまえば長期保存が効くため、冬の貯蔵食としても珍重され、また彩りも良く、「金」の字が縁起ものとされることからお正月のおせち料理にもよく使われま
す。甘い物が珍しくなくなった現代では、以前ほどはみかけなくなったものの、やはり冬の旬に欠かせない食材として、この時期に出回ります。

金柑には、ミカンの倍ほどのビタミンCがたっぷり含まれています。

ビタミンCは体内でコラーゲンを合成・維持する役割を果たします。コラーゲンといえばお肌をツルツルにすることで今多くの女性が注目していますが、せっかくコラーゲン物質を多くとっても、それを体内でうまいこと活用させる役割のビタミンCが足りなかったら効果がでないのです。そのため、ビタミンCが不足すると肌がカサカサになり、肌荒れ、歯ぐきからの出血などの悪影響が出てしまいます。

金柑

他にも、ガン予防、抗酸化作用による老化防止、疲れの原因となる物質を排泄させる効果、血中コレステロールや中性脂肪を抑える効果などなど、ビタミンCの効果は数多いのですが、その中でもこの季節私にとって嬉しいのは、以下の2つの効果です。

この季節、寒さによって抵抗力が落ち、風邪を引きやすくなります。
私は風邪を引くとすぐに喉に症状があらわれてしまいます。これは声を売りにする和尚としては致命的です。喉がガラガラで法事の時お経の声がイマイチでは、お檀家さんに申し訳がありません。そのためこの季節、風邪の予防にはかなり気を使います。そこで役立つのが金柑のビタミンCです。
ビタミンCは白血球の働きを助けて免疫機能を高め、風邪の予防に効果があります。
またビタミンC自体が病原菌をやっつける力も持っています。
その上、もし風邪にかかってしまった場合、ビタミンCには回復を早める効果もありますので、風邪対策にはビタミンCが欠かせないのです。

私はこの「金柑の甘露煮」を作り置きしておき、一粒食べてから法事に行きます。あるいはこれをとろみと一緒にお湯に一粒入れて、溶かして「金柑湯」として飲むのもオツなものです。これにより、喉の調子が悪くなりがちな冬の時期にも、なんとか美声を?保って読経することができるのです。

また、12月は「師走」とも言うとおり、普段落ち着いている老師でさえも走り回るほど忙しい月です。年内にかたづけなくてはならない仕事がたっぷりあり、あれもやらねば、これもせねば、と時間に追われる日々が続き、知らないうちにストレスが貯まります。
ストレスがたまると、体内ではそれに対抗するために抗ストレスホルモンが分泌されますが、それを生成するのを助けるのがビタミンCなのです。
そのため強いストレスを受けたときにビタミンCが足りないと、イライラすることになります。特に、タバコやお酒をたしなむ人は、ビタミンCが不足しがちなので注意が必要です。
また、柑橘類に含まれるビタミンPは、ビタミンCの吸収を助ける働きがありますが、これはミカンなどの皮の裏の部分に多く含まれているのだそうです。ミカンを食べるときにはふつう皮をむいてしまうのであまり摂取できませんが、この金柑の蜜煮ならば、皮ごと口にできるので都合が良いわけです。

なんだか万能薬のように見えるビタミンCですが、実際には熱に弱く、また水に溶けやすい性質を持っているため、この甘露煮のように長時間煮込んだりする料理の場合、実際にはそれほどたくさんのビタミンCが摂取できるわけではありません。
そう説明すると、すぐに「じゃあ食べても意味がないのか」と判断する方も多いのですが、それはあまりに科学的な数値に頼った二者択一的な思考です。ビタミンCなんて知られていなかった昔から、私たちのご先祖さまは冬には金柑がよい、ということを経験から得ていたのです。昔の知恵を馬鹿にしてはいけません。

すなわち、手間をかけて作ったその心(まあ愛情と言い換えてもいいですけど)が、科学的な数値を超えて食べる者の心に届くのだと思います。
そこには、ビタミンCのサプリメントを味気なくゴクンと飲み込むのとは格段に違った、深い味わいがあります。甘露煮を一粒お湯に入れ、軽くつぶして飲む金柑湯から立ち上る湯気の温かさと、それをゆっくりといただくときの心の余裕が、風邪とストレスを防いでくれるのではないでしょうか。

金柑甘露煮

◎作り方

(金柑10個分、増やすときはそれに応じて調味料などを増やして下さい)

1 金柑の側面に包丁で6本くらいの切れ込みを縦に入れる。ヘタ?を取り除く。
2 360ccの水に塩2.5mlを加え、中火で2を20分くらい煮る。
3 煮汁を捨てて水にさらし、1で入れた切れ込みに串を刺し、中の種を取り除く。
(種だけを取り出し、実の部分はほじらないように注意)
4 3を蒸し器で15分くらい蒸す。
5 鍋に移し、昆布ダシ(または水)100cc、酒50cc、みりん100cc、砂糖10ml、塩少々
で煮込む。沸騰したら弱火にし、内フタかクッキングペーパーをかぶせて
焦がさないように注意しながら煮汁がほとんどなくなるまで煮詰める。
6 火を止めたら早めにタッパなどの容器に移す。(冷えると蜜が鍋に張り付きます)

※4の蒸す過程を省く場合は、その分5で水を100cc増やし、煮る時間を長くします。

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コメント

  1. より:

    はじめまして。
    おかゆについて調べ物をしていたらこちらに辿り着き、以来、時折拝見しております。

    お寺の世界の話を拝読していると、背筋がぴんと伸びる思いです。

    金柑の甘露煮、つやつやしていてとても美味しそうですね。
    恥ずかしながら今まで金柑とあまり縁がなかったので知らないのですが、この甘露煮は常温保存は可能¥なのでしょうか。
    やはり冷蔵庫での保存が必要でしょうか。

    もし可能¥ならば、喉が乾燥しがちなオフィスに常備し、金柑湯として頂きたいなと思ったのです。

    少し検索してみたのですが、よくわかりませんでした。
    お手が空いたときで結構¥ですので、お教え頂けたら幸いです。

    長文、駄文で失礼致します。

  2. 凜さまコメントありがとうございました。
     お尋ねの件ですが、冬ならば常温でも10日~2週間くらいは大丈夫です。ただし、オフィスの室温によって変わりますので、暖房が強めの場合はもう少し早くいたむかもしれません。
     大体八百屋さんでは20個くらいで一袋で売っている場合が多いので、ある程度まとめて作り、7~10粒分くらい(1週間分程度)を小さいタッパに移してオフィスに持って行き、あとは自宅の冷蔵庫に入れておいたらどうでしょうか。
     また、画像の金柑甘露煮は直接食べるための作り方なので、あえて煮汁が残らないように仕上げてあります。
     はじめから金柑湯として作る場合には、煮込む際に水を200ccくらい増やし、砂糖も10mlくらい増やして、完全に煮詰めずに、煮汁をある程度残して火を止め、シロップがヒタヒタに残るくらいの感じに仕上げると、金柑湯向けになります。
     またどうぞご質問ください。

  3. より:

    典座和尚様

    丁寧なご解説、ありがとうございます。
    是非、金柑湯向けの配分で作り、小分けで職場に持参したいと思います。

    コメントの数箇所に、私が入力していないはずの“¥¥”マークが入っているのは何故なのでしょう?
    コメント確認の際に既に入っていたので修正したのですが、反映されたコメントにはやはり入っていました。

    今、このコメントも、確認画面で“”の中にひとつしか入力していない¥¥マークがふたつに増え、修正画面に戻ると今度は4つに増えました。
    何度やっても同じことの繰り返しなので、そのまま投稿します。

  4. 凜様こんばんは。
    確かに、コメントの文字に¥¥が入っています。
    私が午前中に書いたコメントにも、¥¥が入ってしまい不思議に思いました。(その箇所自体の言い回しを替えたら直りました)

    a-blogのサポートページを見に行くと、CGIのバグで、対策ファイルがアップされておりました。
    パッチをあててバージョンアップを行いましたので、おそらく今後は大丈夫なはずです。ご指摘ありがとうございました。
    ご迷惑をおかけしました。m(_ _)m

     金柑湯、作ってみたらまたご連絡下さい。ひとくちに金柑といっても、皮の厚さとか大きさとかが全く違うので、レシピの分量や似る時間はあくまで目安として、現場で調整してみてください。

  5. 天然生活 より:

    金柑の甘露煮は確かに風邪を吹き飛ばしてくれそうですよね。

    私は実家に金柑の木が生えておりまして、幼い頃に金柑の実を
    取ってはおいしいと食べていたのをまだくっきりと覚えております。

    このようなこともあり金柑という普通は生であまり食べることのできない果物を食べることができたので、なじみがありますね。

    ぜひこの金柑の甘露煮も食したいと思います・∀・

  6. より:

    遅くなりましたが、金柑の甘露煮を作りました。

    金柑湯用に水と砂糖を多めにして作ってみました。
    残念ながら、味がイマイチでした。
    家に黒砂糖しかなかったのでそれを使い、しかもくどくなりそうだからと適当に量も減らしたのがいけなかったのかなと思います。

    お湯に入れて潰して皮を食べたらとても美味しかったので、味付けの問題だろうなーと思います。

    味がイマイチなのでなかなか減りませんが、食べきった頃にまだ金柑があれば、今度はきちんと白砂糖かグラニュー糖で作ってみたいと思います。

    でも20分も下茹ですると風味とかも流れて行ってしまってるんじゃないかと気になってしまいます。
    下茹でを短めにして、煮込む時間を長めにすると味とか柔らかさとか変わってしまうのでしょうか・・・。

  7. 凜様、返信遅くなり申し訳ありませんでした。
    実際にキンカンが入手できたようですね。

    う~ん、さすがに黒砂糖はキンカンには合わないと思います。黒砂糖はコクがあるのですが、独特の風味がありますので、たとえばカボチャやさつまいもなど、もともと甘さを持っている野菜の煮物などに隠し味として入れると良いです。しかしキンカンには合わないでしょう。
     
    ご心配されている下ゆで時間の長さですが、確かに長く煮るとその分風味は損なわれますが、この料理の場合、ひとつには皮ごと食べられるようにするために、そしてもうひとつには長期保存できるようにじっくり味を染みさせるために長く煮るわけです。
     ですから、多少固くても大丈夫、しかもすぐに食べきってしまうという場合には、煮る時間を短くして風味を優先させてもまったく問題はありません。

     いつも私が強調していることなのですが、レシピというのはあくまで一つの参考例ですので、自分の目的や好みによって臨機応変に変えるべきものなのです。ちなみに私自身、作るときどきによって色々と変えますので、このレシピ通りにつくっているわけではありません。
     
     そうはいっても、はじめての料理を作る場合、はじめから自己流だと失敗してせっかくの食材が無駄になってしまう可能性がありますので、まずはレシピの通りに一度調理し、その結果を見て次の機会には自分でいろいろ工夫して調整してみるのが良いと思います。
     そうやっていろいろ工夫しながら経験を積んでいくのも、また料理の楽しみだと思います。
     明年もよろしくお願い申し上げます。