ぬか漬けのススメ 5 ぬか漬けQ&A

さて、ぬか漬けを続けていくにあたり、気をつけたいポイントを応答形式で紹介します。

問 続けていくうちに、野菜から水分が出てぬかが水っぽくなってきました。このままで良いのですか?

答 少々の水っぽさなら、そのままで問題ありません。
しかしベタベタのドロドロになるほど水気が増えた場合は、2種類の対処法があります。
一つめは、クッキングペーパーをゆるめに折り畳み、ぬかの上部に穴をあけ、埋めておく方法です。
数時間後、クッキングペーパーが水分をすったら静かに取り出せばオーケーです。または水気が多い場合はぬか床の容器の底部に何枚か重ねて敷いても良いです。大量のぬか漬けを作る場合には、水気を抜くための、脇に穴があいて底部に水気がたまるようになっている専用の突き刺し容器が市販されていますが、ご家庭で作る場合はかえって不便だと思います。
もう一つは、ぬかを足す方法です。
あまりたくさんの量を足すとぬかの状態が変化してしまうので、現在の量の5/1以下が良いと思います。その場合、足す方のぬかをフライパンでから煎りし、(油は不使用)充分に殺菌して、約7パーセントの塩をよく混ぜてから追加してください。つまり100gのぬかを足すなら塩7gです。

問 ぬか床に、昆布やとうがらしなどを加えても良いですか。

答 今回のブログ記事では、ぬか以外には何も加えない方法をご紹介しました。なぜならば、その方が初めての人でも失敗が少ないからです。個人的には、たくさんの補助具材をやたらに入れると、かえって美味しさから遠ざかるような気がします。ぬかだけのシンプルな味で充分だと思うのです。
それに、補助具材を加えると、ぬか床の管理が難しくなります。変な臭いがしたり、味が変わったり、カビが生えやすくなったり。わたしは、特に夏の間は、市販のぬか床などであらかじめ昆布や唐辛子などが混ざっているものを使うときには、補助具材を取り除いています。
それでも加えたい方や、上級者は、無理に止めませんので加えてみるのも楽しいかもしれません。
加える補助具材として一般的なのは、昆布、唐辛子、ビール、日本酒、みかんの皮、山椒の実、きなこ、しょうゆ、煮干し、干椎茸などがあります。
おなじ乳酸菌なのでヨーグルトを入れると良い、という人もいましたが、賞味期限的にはどうなのでしょうか・・・。
また、むかしからぬか床が酸っぱくなったら、卵の殻を入れると良いと言われます。しかし私的にはあまり効果がないような気がします。それよりも新しい野菜を入れてよく混ぜる方が効き目があります。
他には、お茶の葉を入れると臭いが消えるという話もよく聞きます。確かにお茶の葉には殺菌効果があるので効果があるのかもしれませんが、混ぜた後お茶の葉を取り除くことはできないので、長くぬかを保たせるためには、お薦めしません。

問 ぬかにカビが生えました。どうしたら良いですか。

答 暑い時期に、数日ぬかを混ぜないとカビが生えます。
その場合は、カビの部分を厚めに取り除き、廃棄します。
そしてあまり大量に廃棄した場合には、新たにぬかを追加します。よく混ぜることが肝心です。

なお、下の写真は「産膜酵母」と呼ばれる酵母菌の一種です。カビと間違えやすい状態なので注意が必要です。
産膜酵母

数日かき混ぜない場合や、ぬかを追加した場合などに発生します。カビと勘違いしやすいのですが、「あーカビだー」と早合点しないでください。産膜酵母は捨てたり取り除いたりする必要はありません。
これは乳酸菌が増えたときに発生します。この膜は、シンナーのような異臭がするのが特徴です。これが出たらすぐにぬかをよーくかき混ぜて下さい。そのままにするとカビが生えます。
産膜酵母の力により、ぬか床内部に脂肪酸やアルコールなどの成分が育ち、よりおいしいぬか床になると言われています。ただ、カビと紙一重なので、無理にぬかを放置してこの膜を作る必要はないように思います。
カビの場合は、胞子のような玉の形をしていたり、色がついていたりするのでわかると思いますが、判断が付かない場合は仕方ないので念のためかびた部分だけ廃棄した方が良いかもしれません。

問 ぬかにくぎを入れると良いと聞きますが?

答 これも古くから言われている知恵ですね。確かに、くぎを入れるとナスの色がとてもキレイに漬かります。
ナスの表面の紫色は、「ナスニン」という色素成分によってきれいな色が保たれているのですが、この成分は不安定で酸性に弱く、ぬか床などの酸性の環境ではすぐに色落ちしてしまいます。ところが鉄を加えると、鉄イオンの効果で色落ちを防ぐことができるのです。ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム)をすり込むのも同様の理由です。

ただしくぎをあまりたくさん入れると、味が鉄っぽくなって苦くなるので、大きめの釘を一本で充分です。
なお要注意なのが、最近のくぎは純粋な鉄で作られているのではなく、さびないように表面に鉄以外の物質がコーティングされているものがあります。ホームセンターや量販店で安価に売っているくぎはほとんどこの類です。ツルツルしているのですぐわかります。そうしたくぎは食用には適しませんので、使わないで下さい。
むかしながらの鉄くぎを探すのはけっこう大変です。漬物用の鉄が市販されているので、それを使う方が良いと思います。

問 夜にぬか床に野菜を入れ、翌日の夜に取り出すと、漬かりすぎているようでしょっぱいのですが・・・。

答 使用する野菜によって、漬かる早さが変わります。
キュウリやナスは、この時期気温が高いこともあり、半日で漬かってしまいます。丸一日だと漬かりすぎてしょっぱくなってしまうこともあるでしょう。
お仕事の都合などで昼間取り出すことができない場合、いくつかの対処法があります。
一つめは、塩もみをしないで野菜を漬けることです。
これは確実に効果が出ます。
二つめは漬かるのに時間がかかる野菜を使うことです。
人参、大きめのカブ、大根などは丸一日でちょうど良いと思います。また、ナスでも半分に切らず、ヘタだけとってまるごと漬ければ、一日でも大丈夫だと思います。
三つめは、ぬか床の容器ごと冷蔵庫の野菜室に入れ、温度を低く保つことです。これにより、漬かる早さが遅くなります。冷蔵庫が空いてない場合は、レジャーに持っていくクーラーボックスにぬかの容器を入れ、朝保冷剤を多めに入れて涼しいところに置いておけば、数時間は温度が低い状態が続くため、仕事から帰ってくるまでにちょうど良いと思います。
四つめは、漬かりすぎた野菜を、切る前に多めの水に数分漬けて塩抜きをする方法です。風味も少々抜けてしまうのが難点ですが、確実に塩けを調整することができます。
なお、漬かりすぎるからといってぬかの塩分を減らしてはいけません。適度な塩分を保たないと、ぬか床の機能を発揮することができなくなってしまいます。

問 夏休みの旅行に出かけるため、数日間留守にすることになりました。せっかく続けたぬか漬けもあきらめなくてはいけませんか?

答 旅行に限らず、仕事の出張などで数日間留守にする機会も多いことでしょう。昔はそういうとき、ご近所さんにぬか床の容器ごと預けて、かき混ぜをお願いしたものですが、現代社会ではちょっとそれは難しいですよね。
こういう場合は、野菜を取り除いたぬかを二重のビニール袋に移し、冷凍庫に入れて凍らせると良いです。乳酸菌ごと冷凍されるので、帰宅して自然解凍すれば問題ありません。
たくさん冷凍庫に入らない場合は、しかたないので半分だけ冷凍し、残りの半分は残念ですが廃棄します。帰宅後、廃棄した分のぬかを新たに作って足せば、せっかく野菜から出たぬかのおいしさをダメにしてしまうことなく継続することができます。

問 長く漬けている間に、漬かり具合が遅くなってきました。秋になって気温が下がったからでしょうか?

答 確かに漬かり具合は気温と大きく関係します。冬は漬かる時間が長くなります。しかし、土間で調理していた昔と違って今は冬でも台所は暖房などである程度の気温が確保されているので、漬かり具合が格段に悪くなることは考えにくいと思います。
ぬか床を数ヶ月続けると、ぬかの塩分が野菜に染みこんでいくうちに、ぬか自体の塩けが減ってきます。
そのため、塩を定期的に補充しなくてはいけません。
補充の時期はどれくらいの量を漬けるかによって変わりますが、「どうも最近漬かりが悪い」と感じたら補充の時期です。一般的に、ぬか床の塩分は7%が適正といわれますが、新規に作る場合はともかく、塩をあとから追加する場合はどれくらい足せば7%になるかわかりませんので、目分量になります。ご家庭で作る容器の量なら、とりあえず小さじ一杯入れて様子をみると良いでしょう。数日たって漬かり具合がどのくらい変わったかを見て、足したり次回減らしたりすると良いと思います。

さて、ここまで丁寧にご紹介すれば、あとはご覧の皆様が実行するかどうかです。市販の漬け物とは比べられない格段のおいしさと風味をぜひご家庭でどうぞ。
毎年夏になると、ぬか漬けを食べ続けているせいか、毎日のお通じが快調で、肌の具合もつやつやです。
食事のお供にも欠かせませんが、ぬか漬けの野菜を楊枝で刺しながら口に運び、お茶をすする三時の休憩時間はもう最高です。
やってみたいけど仕事の都合でなかなか一式揃えられないという方は、アマゾン通販も便利です。

    

   

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