ある出版社のお話

お問い合わせメールをいただきました。

過去に私が共著者として原稿を執筆した法話集があるのですが、刊行時のブログ紹介記事を見た方から「その本が欲しいのですが入手できません。どうすれば良いか」という主旨のメールでした。

今後同様のお問い合わせもあるかもしれませんので一応ブログにも書きますが、結論から言いますとその出版社は昨年の夏頃倒産してしまいました。

ですから新品で注文することはもうできません。
どこかの書店に新品の在庫がもしあれば、その分に限り入手できる可能性はあります。あとは古書店やアマゾンなどのネット書籍ショップ、あるいはオークションサイトなどで中古書を購入するしかありません。

この出版社さん、良くも悪くも話題にことかかない個性的な会社でした。
一般向けの本もありましたが、僧侶向けの仏教専門書籍が非常に充実しており、他社にはない独特の内容の本がたくさん揃っていました。各宗派ごとに、その業界のトップクラスの専門家が書いたハイレベルの専門書は大変ためになり、私もとても良い勉強をさせていただきました。

しかし一方で、通常の出版社にはあまりない独特の手法に少なからず疑問を持った方も多いと思います。信憑性に問題がある伝聞や噂の類ではなく、私自身ビックリした体験があります。

まず1冊目の法話集で編集部から執筆依頼が来たときのことです。
「今度刊行する法話集に、ぜひ法話模範を執筆して欲しい」という主旨でした。
精進料理に関する原稿なら自信を持ってお引き受けするところですが、曹洞宗の僧侶対象の法話となると話は別です。
「私などが模範法話を書くなどとんでもない、もっとふさわしい大先輩たちがたくさんおられるのにどうして私に?」と率直に訊ねてみました。

曹洞宗には「布教師養成所」という、ひと言で言えば法話の専門家を養成するための機関があり、特に志願した各都道府県の代表が机を並べて講義や実技を学ぶことができます。私も入所して2年ほど勉強させていただいたのですが、その時の同期生の中から数人をピックアップして今回の依頼をしている、とのことでした。

その数人の中に選ばれたことは大変光栄ですが、どうして法話界の重鎮ではなく、養成所を終了したばかりの若手に執筆を依頼するのかがどうしても不思議でした。
いわく、「今回の書籍には3名の高名な老師が監修者をおつとめ下さるので、原稿に未熟な部分やおかしな点があれば全面的に修正指導して下さるから安心して下さい」とのことでした。
その3人の監修者は大変名の通った実力者です。そうした高名な老師方の添削指導を受ける機会など滅多にありませんから、良い勉強になると思いお引き受けすることにしたのです。
余計なことですがはじめから執筆謝礼(原稿料)はありませんと明示されていたので、そのかわり老師が赤字で修正指導した私の添削原稿のコピーを必ず下さい、という条件を伝えました。

締め切りは非常に短く厳しかったのですがなんとか原稿を納品し、やがて校正原稿(こちらが送った原稿データを、実際に誌面のレイアウトに構成しなおした見本のようなもの。これを著者が確認し、誤字脱字を直したり、おかしな部分があれば修正して編集部に送り返します)が届きました。
この時点では私が納品した原稿と何も変わってなく、監修者が修正した部分は一切ありませんでした。失礼がないよう、著者校正を経て誤字脱字等を直してから監修者に回すのだろうな、と判断して校正作業を終えて再納品しました。

数ヶ月後、完成した本が1冊送られてきました。
開いてみると私の原稿は全く監修指導修正はされておりませんでした。

長くなるので続きます~~

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Posted by 管理主宰者・典座和尚