和尚と税金

2月13日に書いた記事の冒頭で「毎年、確定申告の関係で1月には昨年の活動を整理します」と書いたところ、メインの用件のついでとしてですが「和尚さんも確定申告をするの?」というメールが数通届きました。
確かに「和尚は税金かからなくていいねー」ていうようなことはふだんでもたまに言われます。

いつかどこかでそんなはなしを聞いたのだと思いますが、「和尚は税金を払わなくていい」というのは完全な誤解です。
おそらく「宗教法人」には税金がかからない、という点と混同しているのだと思います。

どういうことかといいますと、「お寺」には確かに税金はかかりませんが、「和尚」は皆さんとまったく同じように税金を納める義務があるのです!

今ひとつピンとしない方のためにさらに言うと、たとえばあるホテルを例にすると、社員さんは毎月いただく給料の額に応じて所得税を納めます。というよりも給与からあらかじめ税金相当額を引いた分を受け取る源泉徴収という形がほとんどでしょう。さらにそれとは別の話として、ホテル全体の利益(もうけ)の中から、会社自体として事業税などを納めるわけです。

宗教法人の場合はそのホテル全体の利益(もうけ)にあたる部分、つまりお寺の収入に対しては税金が免除されている、ということなのです。

そう話せば納得してくれる方がほとんどですが、中には
「え?お寺の収入と和尚の収入って別なの?和尚に渡したお布施は和尚のものになるのかと思ってた!」といって不思議な顔をする方もいます。

まあ確かにそのあたりのシステムは外から見たらわからないのでそう誤解されてもしかたありませんが、たとえばお葬式や法事で皆さんが納めるお布施は、形の上では和尚個人に渡すわけですが、それがそのまま和尚のものになるわけではなく、すべてお寺のものになるのです。
ホテルのフロントで支払った宿泊代金は、フロントのお姉さんに渡しますがそのお姉さん個人のものになるとは誰も思いませんよね。

支払った代金が、レジに入ってホテルの収入になり、その中からフロントのお姉さんのお給料が出るのと同様に、和尚に渡したお布施はいったんお寺の会計に入り、和尚はお寺の会計から給与をいただくのです。
まあほとんどのお寺は会計担当の従業員がいるわけではないので、住職が会計係も兼ねている場合が多く、自分でその作業を行って自分でいただくわけですが、システム的には会社と従業員の関係と同じなのです。

そして、一般のサラリーマンと同様に、和尚もお給料から源泉徴収などで所得税を納めます。(もちろん例外もあり、葬儀などの数が少なくて毎月一定額の給与を安定して出すことができない場合などは、たとえばそのときどきにいただいた額の総計からあとで税金を納める場合もありますが、その場合でも、原則的にはお寺の会計に一度参入してそこから支出する形をとります)

要するに、僧侶個人としては他の職業とまったく同様に、所得額に応じて税金を納めているのです。そのほか県民税も自動車税も消費税もまったく同じです。税金の専門家ではないので特殊な例は知りませんが、普段の生活の中で和尚だからといって個人的に免除される税金はおそらく無いと思います。
この辺、けっこう知らない方が多いようですが是非覚えておいてください。
(「和尚は税金かからなくていいねー」と冗談半分にいわれた場合、まあいちいち反論はしませんが正直気分いいものではありませんので)

「でも寺にはかからないんでしょ?そんなのずるいから宗教法人にも税金をかけるべきだ!」という意見もよく聞きます。
確かに学校法人や宗教法人などの公益法人は税制の優遇処置がとられています。

なぜなら、一般の会社は利益を追求することが主な目的であることに対して、公益法人は、積極的に不特定多数の者の利益を実現することを目的として事業を行うことが大前提で、ひらたくいえばもうけは二の次ということです。

まあ非常に複雑な制度なので簡潔に意見を述べるのは難しいのですが、極端な例を言えば、会社の場合、上司が「よし君たち!今月の売り上げ目標額達成までもう少しだ!さらにがんばって営業に力を入れるように!特に今月はおすすめの○○をイチオシしてアピールするように!」ってのはごくふつうの風景でしょう。

しかしもしお寺で「はい、このありがたいお経1時間がセットになったスペシャルコースは○○円となっております、Bコースは今月のサービス価格で○円です。またせっかくなのでオプションでこのおフダ○円はいかがでしょうか?消費税入れて○円です。あ、これ領収書とおつりです。ハイ次の方ー」なんていわれたり、「お葬式は是非うちのお寺で!」って感じで積極的に営業活動するお寺が増えたら嫌じゃないですか?
お布施というのは物品販売の対価ではないので定価はありません。あくまでも施主の志を納めるのです。金額で言えばたくさん納めて下さる方もいるし、そうでない方もいます。しかし課税されるとなれば経理上も帳簿上もあまりあいまいなことはできなくなるでしょう。
もうけを目的にしていない、という点が公益法人としての宗教法人の存在意義でもあるので、ご理解いただきたいところです。

まあそもそも僧侶の根本的な存在意義を考えれば、法制度上でどう位置づけられていようがその姿勢は変わらないはずなのですが、そうはいってももし仮に宗教法人、つまり寺の収入にも税金がかかるようになるならば、どうしても法人の責任者としては利益を気にする必要が出てくると思います。
それが本当に良い方向に向くのかどうか、そのあたりもよく考えて「宗教法人にも課税すべきだ!」と論じてほしいものです。

蛇足ですが、まあそういうことをおっしゃる方は、本当に良かれと思って主張なさる方ももちろんおられるでしょうが、ほとんどがお寺に対して悪い印象を持っていて、攻撃の手段というか不満解消のためにそういうことをおっしゃる場合が多いように思います。
仮に不必要なほど派手な暮らしをしている和尚が身近にいたら、「それって仏教の教えと違うんじゃねーの?良い暮らししやがって・・その上、俺たちが毎日まじめに働いて税金納めてるってのに、和尚はなんで税金不要なんだ!」と憤りを感じるのは当然です。
したがって私たち僧侶の側も、そういった思いを起こさせないためにも、仏教の基本に立ち返って自らの素行を反省しなくてはいけないとあらためて感じます。

まあ名誉のためにいいますと、うちの寺の状況をよく知っている方は「お寺にも課税すべきだ!」などとは言いません。高級外車どころか、まだ地デジのテレビも導入していないくらいですから・・・。

ともかく今回は、和尚も皆さんと同じくちゃんと税金(所得税)を納めていますよ、ということです。こんな話はブログでくらいしか書けません。つまらない話で失礼しました。

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Posted by 管理主宰者・典座和尚