和尚と税金 その2

前回、「和尚個人はほかの職業と同じように税金(所得税)を納めている。ただし寺(宗教法人)の収入には税金がかからない」と説明しましたが、その他にも多くの方が誤解している点があります。

寺の収入の中で税金がかからないのは、宗教的な活動に関するもの、つまり葬儀や法事などでいただいたお布施などに限ります。まあヘンな言い方ですが、つまり和尚本来の活動だけが公益事業として税が免除されているのです。

したがってたとえ宗教法人でも、お布施以外の収入には他の職業と同様、利益に応じて税金がかかります。たとえば寺の境内の片隅で観光客向けに有料駐車場を運営したり、土地を貸したり、おみくじやお守り、お札を販売する売店を経営したり、茶道や華道、書道教室などの先生をして月謝をいただいたりといった、いわゆる利益を追求する事業です。それらは公益事業ではないため、事業場を設けて継続的に運営される収入に対して税金が発生します。
したがってお寺の会計とごちゃまぜにせず、別個に考えて運営しなくてはいけません。

先日、こんなニュースが流れました。

住職、2億円申告漏れ 揮毫料など国税指摘
2011年2月17日 asahi.com

誰でも知っている有名なお寺の住職が大阪国税局の税務調査を受け、三年間で2億円の所得について申告漏れを指摘された。住職は美術品販売業者の依頼で掛け軸用の書を書き、その礼金を収入として計上しなかったもよう。(記事を要約して引用)

禅僧が書いた書は「墨蹟」とよばれ、高僧のさとりの境涯がそのまま文字に表れたものとして、古来単なる美術品を超えて尊ばれてきました。記事になった宗派は歴史的にみて主に都(みやこ)で発展したため、茶道などとも結びつき、その書は和室の床の間用などに重宝されています。

実際に曹洞宗でも、たとえば高僧を訪ねた際、持参した手土産のお返しとしてまれに墨蹟をいただくことがあります。基本的にモノを持たない禅僧らしいお返しの仕方だと思いますが、はじめから一般への販売目的で大量に書くというのは曹洞宗ではほとんど聞いたことがありません。
今回のニュースの場合、業者が売ることを前提に書いていて、対価を受け取っているわけですからあきらかにお布施ではありません。公益法人としての免税活動とは別もので、課税されるべき事業収入となります。

報道によりますと、くだんの住職は国の行く末を想ってその収入を文化財保護のために用いたのであり、一切私的には使っていない、と主張しているとのことですが、使い道がどうという問題とは別次元のはなしで、それ以前にその収入が宗教行為にかかわるお布施なのか、あるいは営利事業の対価である収入なのかをきちんと分けて扱い、墨蹟に対する収入はしっかり帳簿に別途記載して所得税なり事業税を納めなければ完全にアウトなのです。

そういえば昨年、有名な栃木県日光○○宮でも、駐車場の収入を事業収入として申告しなかったため国税局から五年間で5億円の申告漏れを指摘されたこともありました。

原理原則を持ち出せば、僧侶はそういう世俗の雑事から離れるために出家しているわけですが、そ
れは理念や信仰の上で世俗を捨てているだけであり、実際に居住している以上はその国の法律から逃れることは出来ません。
納税は日本国国民の義務です。いくら出家の立場でも、病院に行けば保険を利用しますし、年金などの行政サービスを受けたりするわけですから、都合の良い部分だけ俗世の制度を利用して、税金なと不利益な場面では出家だからそういうことはよくわからない、では通用しないのです。

確かに、あまりお金のこととか税金のことに詳しい和尚さんはイメージ的にちょっと嫌かもしれませんが、だからといってまったくそうした金銭的な処理をいい加減にするわけにはいかない時代なのです。

しかし墨蹟だけで三年間で2億円の収入というのは・・・
報道では1枚3~5万円の報酬を得ていたとのことなので、単純計算2億円÷5万円で4000枚分。三年間なので一年間あたり1340枚。これは売れた数なので実際はもっと書いたのでしょうから、多忙な住職が本当にそんなにたくさん書いたのでしょうか??
ちょっと信じられません。

お布施なのか営利事業としての対価なのかは判断が難しい例も確かにあります。
今回の場合、もし年に数十枚程度であれば、お布施を納めて下さった信者に対して、ささやかな気持ちとして墨蹟をさしあげたということで、収入は事業でなくあくまでお布施であるという見方もできなくもないと思いますが、年に1000枚以上を、額を決めて業者に渡したとなればこれはもうどう考えてもお布施ではなく営利事業でしょう。

今回の記事で何を言いたいかというと、宗教法人といえども営利事業の収入については納税の義務があり、ほとんどのまじめな寺や神社ではそれをしっかり守っているわけです。
しかしこうしたごく一部の方がルールを守らないために、宗教者全体が「ほらみろ、和尚は税金ごまかしてるじゃねーか」というような誤った印象を受けるのは本当に悲しいことです。

ウン億円!などという規模の収入や税金は、ほとんどのお寺や神社には無縁の話
その辺を誤解してほしくない、ということです。

なお今回の場合一部業者がその掛け軸を数十万円で無理矢理高齢者に押し売りしていたという一部報道もあります。
事業収入をきちんと申告していなかった問題とは別に、知らなかったこととはいえ自分の書いた墨蹟で多くの方に迷惑がかかったのであればそちらの方も大きな問題ではないでしょうか。

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Posted by 管理主宰者・典座和尚